タロコ族について
 
幸福の味  最も単純な幸せ — 山に住む民の生活
 
山に住む太魯閣族はその生活において、常に楽しく愉快に過ごしています。たった一人でも口琴をならしたり鼻歌を歌いだせば、自ら楽しみを得ることが出来るのです。意に沿わないことがあっても祖先の霊を信じgayaに従えば、乗り越えられない難関はなく、解決出来ない問題はないと、太魯閣族の人々は総じてこのように互いに鼓舞しあうのです。

太陽が輝き空気中の熱気が凝縮されると、耐え難い蒸し暑さで玉のような汗が体のあちこちから流れ出ます。しかし覆い隠すように濃く生い茂ったアカギの木の下で、太魯閣族の人々はポケットから桂竹・銅片・麻縄そして毛線を取り出し、小さく精密な口琴を作ります。その口琴を唇で吹けば、耳に心地よい音楽が響き、周りの人々も鼻歌を歌いだします。そして悩ましい暑さを忘れさせてくれます。



歌って踊って、どんな境遇でも幸せになる

太魯閣族の歌への愛情は、祭りや仕事、酒を飲むときだけでなく、彼らはいつでも鼻歌を歌っています。よく使う音はRe・Mi・So・Laだけですが、重要なのは中低音での発声にあります。長年山に関わっているため、彼らは大自然の風の音・鳥の声・水の音をまねた音に、美しい歌を合わせた調和のとれた音を好みます。

ある時、一人の人が家から太魯閣族特有の料理を持ってきました。冷たいhdama brbrun(バナナの葉でもち米を蒸したもの)の葉を剥き取ると、お腹を空かせたみんなは笑顔になります。また、便利で簡単な竹筒飯は、太魯閣族伝統の食べ物です。そして、芭蕉やクワズイモの葉で包んだbutongはにぎやかにみなの手から手へ配られていきます。

歌声はますます大きくなり、涼しい風が吹くと、木の下で歌い踊りながら食事をします。ステップは簡単で、主に左右前後へ動くだけですが、にぎやかな雰囲気はますます多くの人を宴に誘い込みます。



自然と関わり、祖先の霊の恩恵に感謝する

夕方になると太魯閣族の人々は樹の前の空地で、石を積み上げて作った伝統的な三石灶(かまど)を使い、集めてきたたくさんの芭蕉の葉に火をつけ燃やします。そしてきれいに洗った石を火の上に置きます。「肉を上に置いて焼くと、おいしいよ!」部族の人が教えてくれました。この時、あわただしく太魯閣族の人々は次々と竹で作ったコップと木で作ったお皿をみんなの前に並べました。そして水で煮る、火であぶる、石で焼く、竹で蒸す、などで調理したクワレシダ・ヤマジサ・川魚・川エビ等の食べ物、そして地鶏やおもち等のおかずを並べ、栗を釀造した酒を飲みます。太魯閣族の人々は食べながら七月に開催する感謝祭について話し合います。

古来より太魯閣族は天地万物と個人や部族の禍福はすべて、祖先の霊と関係があると信じてきました。毎年九月にアワを収穫した後は、祖先の霊の祭りまたは感謝祭を開催する重要な季節なのです。普段、彼らの着物は簡素でカラムシの茎から作った繊維を使った「カラムシ織」の布で出来ていて、白色を基調としています。身につけているのは、わずかばかりの簡単な幾何学模様や祖先の霊を象徴する菱形の模様のある服と綁腿と呼ばれる脚を守る布だけです。一方、祭りの時には彼らは熊を象徴するトーテムが付いた菱形の胸当ての「英雄装」を身にまとい、貝殼で作った服の上にハトムギで作った美しいネックレスをつけます。

祖先の霊の祭りの時には、まず首領や長老が時間を決めます。当日は太陽がまだ昇らない時間から、全ての太魯閣の男性が祭場に集まり、それぞれおもちや豚肉を刺した竹の棒を用意します。そして祭りが終わると、これら祖先の霊にお供えした物をみんなに配るのです。

これらの話を始めると、太魯閣族の人々の顔には次々と楽しげな笑顔が浮かびました。そしてみんなは「種まき祭」「布織り祭」「狩猟祭」「収穫祭」等の人々が待ちわびている祭について話し始めました。これらのイベントにおもしろいレースなどを組み合わせて、仕事で都会に出ている若者が帰郷し参加するよう誘います。そうして部族の求心力を凝縮したものが人々の心に訴えかけるのです。